言葉はちっぽけだから。

キスマイと中村さんが好きな人。

「そして僕は途方に暮れる」を観劇

そして僕は途方に暮れる
www.bunkamura.co.jp
最初で最後の東京楽日を観劇してきました。
久しぶりに私の名義がちゃんと担当のチケットに機能してくれたTT。

彼の外部舞台を見るのは、これで4回目。
パンフレットのインタビューにも「役作りの軸を作るのが難しかった」とあったけれど、主人公の菅原裕一が、癖があるようで癖のない結構どこにでもいそうなちょっと頼りない男、というナチュラルさが「作れない」難しさだったのかな、と思いました。

菅原裕一(藤ヶ谷太輔)はフリーターで自堕落な生活を送っている。とあるきっかけで、恋人・鈴木里美(前田敦子)、親友・今井伸二(中尾明慶)、バイト先の先輩・田村修(米村亮太朗)、学生時代の後輩(三村和敬)、姉・香(江口のりこ)、更には母・智子(筒井真理子)を芋づる式に裏切り、あらゆる人間関係から逃げ続けることになり、後戻りできなくなる。しかし、最後に偶然にも、家族から逃げていった父・浩二(板尾創路)に出合い、裕一の中の何かが変わる。
特段、裕一が人の道から外れた『悪い人間』というわけではない。何かの歯車が狂い、このような事態に陥るが、誰でも一つ、ボタンを掛け違えたら、彼のようになりえるのではないかと思えるくらい、ただただ、そこら辺にいそうな普通の価値観の人間なのである。裕一はなぜ逃げ続けたのか、最後にどのような決断をするのか…

彼を取り巻く恋人、友人、先輩、後輩、姉、母、父。これもまたどこにでもいそうな人たち。
自分だけの世界に閉じこもることって簡単で、それは「逃避」という名の「自己防衛」であると私は感じているのですが、やはり人が成長するためには、他人が必要なんだなって感じました。そして、成長することに遅すぎることはないけど、時間の流れは人それぞれで、「タイミング」というのもまた重要だな、と。
よく何事も「縁」のあるなしで結果を振り返ったりするけれど、その「縁」を逃していたことも時にあったのかもしれないな、と。ただ、その逃すことも自己の成長のためにはきっと必要な時間で、結局はこれもまたご縁で「自分には今じゃなかった」ということなのかなぁと。

もやもやした最後で割と重くなる、という感想をちらほら見かけましたが、私は演出もストーリーも、今回が一番好きでした。空間を切り取ったような舞台装置と、映像演出が丁寧に融合されていて、「切り取られている日常を見ている」という楽しさががあったからかも知れません。

ひとつひとつの舞台で、藤ヶ谷くんは、必ずもがき、吸収し、成長しているのだなぁ。改めて凄いなぁと感動しました。
三浦さんの作品は初めてでしたが、今公開されている「娼年」は小説は読んで好きなので、是非見に行きたいと思っています。

以下、ネタバレ。


本当にイライラする主人公だったのですが、序盤の休日の過ごし方が自分の休日と重なり「これはいかんな」と反省。あっちゃんがスカートを脱ぐときに、思わず「キャー!パンツパンツ!!!」と思ってしまうゲスな脳内。もちろん太ぴぃの時も言わずもがな。

人間関係の問題にぶち当たる度に、他人のところを転々としていく主人公なのですが、一番酷だな、と感じたのは、後輩からのポジティブな追い詰め方でした。役者の三村さんもインタビューでおっしゃっていましたが、「すげー!さすが!」とほめ殺しで追い詰められる裕一のことを思うと胃がキリキリしました。全然すごくないし、面倒を切り抜けることも出来ずに逃げることしかしてないのに、やたらポジティブに崇められるって逃げ場ゼロ。

そして、私が主人公菅原の姉だったら、全く同じようなことを言ってしまっていたのではないか、というリアルさ。

ぐずぐずしながら、自分よりさらにクズな親父と暮らしながら、やっと裕一は向き合う勇気が持てたのに、時すでに遅しで友人と恋人が浮気をしているという事実(絶対そうだと思ってた!)。
掛け違えたボタン、なんて表現があったりするけど、裕一にとって「巡り巡ってやっと出た答え」で、ぐるぐるした時間は彼が人や問題と向き合う勇気を持つために必要なことで、やっと成長した姿で戻ってきたのに、彼女(友人)にとって裕一が向き合えるようになることって大して重要じゃなくて、重要だったのかもしれないけど、裕一本人程その時間を必要としていなくて、結局、周りは違う時間軸で動いていたという事実。

なんか残酷だけど、こういうことってあるよな~と妙に納得して終わったので、すっきりしました。
文字通り、最後に彼は途方に暮れてしまったわけだけど。

苦しそうに演じている姿とは裏腹に、カーテンコールで板尾さんにぎゅーっとされている姿はいつものきゃわゆい太ぴぃで、なんか感無量でした!

大阪の千穐楽までもう少し、ぜひ怪我のないよう最後まで楽しんでくださいませ。